中華圏を代表するロック・シンガーであり、アンディ・ラウやカレン・モクほか多くの中華スターに楽曲を提供。俳優、そして写真家としても活躍する台湾の人気ミュージシャン、ウーバイに、今年の金曲奨を受賞した最新台湾語アルバム「釘子花」や、台湾語の曲についてきいた。

― 最新アルバム「釘子花」での金曲奨・台湾語アルバム部門での受賞おめでとうございます。
ありがとうございます。金曲奨を受賞するというのは、もうロトにあたるみたいなもの(笑)。毎年ものすごい数の曲がある中から選ばれるわけですから、ノミネートされただけでもすごいことなので、受賞なんて本当にうれしい限りです。

― ウーバイさんは、中国語の曲と、台湾固有の言語である台湾語の曲、両方を歌われますが、この二つにはどんな違いがありますか?
いわゆる華人が僕のことを知るきっかけは、中国語の曲がほとんどなので、『挪威的森林 Norwegian Forest(ノルウェイの森)』など中国語の曲にはいろいろな代表曲があります。一方で台湾語の曲には、中国語の曲とは異なる深い味わいがある。台湾のオーディエンスとの密な関係のためにも台湾語の曲は必要で、これも僕にとってとても重要なことです。曲調も異なり、二つの顔をもっているような感じですね。それで昨年は、1日目はすべて中国語の曲、2日目はすべて台湾語の曲というコンサートもやりました。

― 中国語の曲の日と台湾語の曲の日では、オーディエンスの反応に違いはありましたか?
どっちが勝ったかな、ってずっと考えていて(笑)。たとえば女性は中国語の曲の方が好きなイメージだけれど、でも台湾語の曲が好きな人もいるし。年代によって違うのかとも思うけれど、そうとも言いきれないし……。どっちだろうってずーっと迷ってます(笑)

― 中国や東南アジアなどでのコンサートでは、歌うのは中国語の曲ですか?
中国語の曲ですね。台湾語の曲を歌うとしても1,2曲くらい。

― 台湾以外の場所でも、台湾語の曲はライブですごく盛り上がりませんか?
『世界第一等』は台湾語の曲ですが、これは盛り上がりますね。

― ウーバイさん自身はどうでしょうか?
中国語の曲は、中国はもちろん台湾のライブでも歌うので、歌う回数が多いから慣れてきますが、台湾語の曲は台湾のライブでのみ歌うわけだから、ライブでは初めて歌うなんてことも多くて、歌っていて自分たちで興奮したりします。

― なるほど(笑)。では最後に、アルバム「釘子花」をどのような思いを込めて作られたかを教えてください。
いま、台湾の子どもたちが台湾語を話さなくなってきていて、社会問題にもなっています。台湾の文化や台湾語は、小さい時にラジオで聴いたり、童話や物語を読んだりして覚えていくもので、なくてはならないものだと思います。そういった文化からの反撃の気持ちを込めて、このアルバムを作りました。台湾固有の文化や言葉には魅力的なものがたくさんあるので、それを知ってもらいたいという気持ちもあります。歌詞にしても、話し言葉としては普通に使うけれど、歌詞には普通は使わないような台湾語の言葉を使っていますし、メロディにも台湾的なものを盛り込んでいます。日本の長期にわたる台湾統治の影響もあり、台湾の曲には日本的なメロディも入っていますが、最近、アフロビートというアフリカの音楽を聴いていたら、それと同じようなメロディがアフリカにもあったんです! それも盛り込んで作ったのが今回のアルバムです。結果、僕自身が好きなもの、興味のあるものをつめこんだ、個人的な物語を語っているようなアルバムになりました。

 

ウーバイ老師(=先生)と呼ばれる超ビッグアーティストでありながら、インタビューが進むにつれてどんどん饒舌に語り、気さくな笑顔で答えてくれたウーバイ。「釘花子」のミュージックビデオでは、彼とバンドのメンバーが巨大化し、目から光線を放つ(!)のだが、そのアイデアの源は「プロレス! それとゴジラ!」とのこと。長く第一線で活躍するミュージシャンの貫録と愛嬌に魅了されたインタビューとなりました。